Interview

Vol.9
平野建設株式会社

受け入れは“制度”より“関係づくり”。


先輩が後輩を支える循環が、定着を生む

平野建設株式会社は、磐田市に本社を置く総合建設業として、建築・土木工事を中心に、土地造成、不動産の売買、飲食店運営など幅広く事業を展開している。従業員38名のうち外国人材は6名。フィリピン人材を中心に、技能実習・特定技能の制度を活用しながら、長期定着につなげている点が特徴だ。

特に印象的なのは、外国人材を「特別な存在」として扱うのではなく、同じ仲間として日々の生活面まで含めて支える姿勢が、自然と社内に根づいていること。社内には、先代社長の時代から外国人材受け入れを続けてきた歴史があり、制度が整う前から「人として向き合う」ことを大切にしてきたという。

(インタビュー実施日:2026年2月19日)

採用者インタビュー事業推進部 竹内 基貴さん(総務)

外国人材を採用しようとしたきっかけは?

外国人材の受け入れを始めた背景には、単なる人手不足という理由だけではなく、先代社長の強い想いがありました。先代は戦争や貧しい時代を経験し、海外(中国やフィリピン、カンボジアなど)で現地の暮らしを目の当たりにしたことが、外国人材に関わる大きなきっかけになったと聞いています。

「困っている人たちの力になれないか」「日本で働く機会をつくれないか」という想いから、制度が整っていない時代でも手探りで受け入れに取り組み、責任をもって育成する姿勢を続けてきました。

いつ頃から採用していますか?

受け入れの歴史は長く、先代社長が取り組んできた「中遠海外技術研修センター」という枠組みもあり、平成2年頃の設立を起点に、当時から継続して受け入れを進めてきた流れがあります。

私自身は入社して10年ほどですが、入社時点ですでに外国人材が在籍しており、社内にとって外国人材は「急に増えた存在」ではなく、以前から一緒に働くのが当たり前の仲間として根づいていました。

「協同組合中遠海外技術研修センター」について教えて下さい

中遠海外技術研修センターは、平成2年に磐田市など中遠地域の異業種21社により、外国人研修生の共同受け入れ事業を目的に設立されました。協同組合による受け入れ事業は県下初で、その後の協同組合のパイオニア的存在でした。

以来、組合では中国をはじめ、フィリピン、インドネシア、カンボジアの4か国から合計400人近い研修生を受け入れてきました。創業者である先代社長の平野恒美が理事長を務め、技術の修得を支援しながらも、外国人材と日本人を分け隔てなく接してきました。日本での研修を終えた研修生が、研修先企業と共に母国で工場を開設したり、自ら起業したりした話も聞いています。

受け入れ当初、苦労した点は?

一番大きいのは、やはり言語の壁です。日常会話はできても、建設現場には専門用語が多く、さらに安全面の指示は曖昧にできません。危険につながる内容ほど、言葉の理解が重要になります。

また、建設業は注意点が多く、「危ない場面」「初めて聞く言葉」「現場独特のルール」が重なり、最初は覚えることが多い仕事です。現場では日本語で指導するため、理解が追いつくまで丁寧に確認しながら進める必要がありました。

仕事ぶりはどうですか?教える上で工夫していることは?

フィリピンの方々はとても真面目で、頼んだことをきちんとやり切る印象があります。慣れてくると理解も早く、現場での信頼にもつながっています。

工夫している点は、仕事の指導は現場担当者が行い、生活面は別の担当が支えるなど、役割分担をしながら不安を減らしていることです。私の担当は生活面が中心で、日常の相談、病院の付き添い、手続きのサポートなど、「困った時にすぐ相談できる窓口」になるよう心がけています。

仕事面でも、指示が伝わりにくい部分は「簡単な言葉に言い換える」「現物を見せて説明する」「繰り返し確認する」など、現場での伝え方を工夫しています。

定着のために大切にしていることは?秘訣はありますか?

技能実習で3年働いた後、いったん帰国しても「また戻ってきたい」と言って特定技能で再来日してくれるケースがあります。これは企業側として本当にありがたいことです。

長く働きたいと思ってもらう秘訣は、制度以前に「ここなら安心して働ける」という人のつながりだと思います。先輩がいること、相談できる人が近くにいること、困ったら助けてもらえること。結果として、後輩が入ってきた時に先輩が自然に支える流れができ、“良い循環”が社内に生まれているのを感じます。

外国人材が加わったことで、日本人スタッフに良い変化は?

外国人材としてスタートし、現在は監督として活躍し、表彰も受けるほど信頼されている方がいます。発注者側から「その方が担当なら安心」と言われるほどで、社内外の信頼が厚い存在です。

その姿を見て、日本人の監督や若手社員にとっても「自分たちも負けられない」という良い刺激になっています。国籍に関係なく努力し、評価される実例があることは、組織にとって大きな財産だと思います。

交流やコミュニケーションのために行っていることは?

特別な制度というより、日常の延長で自然に交流があります。新年会や食事会、場面によってはカラオケなど、同じ仲間として一緒に時間を過ごす文化が根づいています。

また、生活面の支援も困った時にはできる範囲で助ける姿勢があります。電気がつかない、郵便物が読めない、病院に行きたい、ゴミ出しルールが難しい――そうした日々の小さな困りごとを一つずつ解消することが、結果として職場での安心につながっています。

今後の採用計画・外国人材に期待することは?

人手不足の中で、外国人材の役割は今後さらに大きくなると感じています。当社としては、単に受け入れるだけではなく、将来的には「現地と日本の両方で活躍できる仕組み」も視野に入れています。

特定技能で長期在留できなかった人でも、帰国後に現地で雇用を生み出す仕組みを考えていきたいと思っています。せっかく関係性ができた人材ですので、そこで終わりではなく、現地でも雇用できればと考えています。例えばフィリピンで、日本から戻った人材が、日本で働きたい人の支援をすれば、安心して来日できると思います。日本で働く道も、帰国後に母国で働く道も、本人の希望を尊重しながら持続的な循環をつくれないか検討しています。

受け入れに躊躇する事業所が感じるハードルは?

多くの企業が感じるのは、「外国人」というイメージだと思います。言葉の壁、文化の違い、ニュースでの印象などが先行し、実際の人柄に触れる前に不安が大きくなってしまう。

また、「3年でいなくなるのでは」「転職してしまうのでは」といった心配も聞きます。ただ、技能実習と特定技能を組み合わせれば一定期間は安定して働くことも可能ですし、何より“最初の一歩”を踏み出すことで見え方が変わる面も大きいと感じます。

これから雇用する企業へのアドバイス

大切なのは制度の理解ももちろんですが、それ以上に信頼関係づくりだと思います。外国人材も、初めての国・初めての職場で不安を抱えています。

企業側が親切に丁寧に向き合い、困った時に相談できる環境をつくれば、自然と長く働きたいと思ってもらえる。文化が違っても、同じ人間として向き合えば関係は築ける――それが当社の実感です。そのためにも、現場の理解を得られるよう、現場の人間をいかに巻き込んでいくかも大切なことだと思います。

外国人人材採用の
4つのポイント

  • 同じ仲間として一緒に時間を過ごす、日常の延長の自然な交流が大切。
  • 信頼関係づくりが大切。 現場の人間も巻き込んで、孤独を生まない環境を作っていく。
  • 生活面まできめ細かく支える、小さな困りごとも解消していくことが安心感を生む。
  • 先輩が後輩を支える、その自然な循環が「また戻って働きたい会社」になっていく。

外国人材インタビューLさん(在留資格:特定技能 技能実習後特定技能で再来日/40代・フィリピン出身)

日本で働こうと思ったきっかけ/会社を選んだ理由は何ですか?

「日本で働きたい」という気持ちが強く、日本という名前は知っていましたが、文化はあまり分かりませんでした。送り出し機関を通じて日本行きを決め、来日後に実際の生活を経験する中で、少しずつ日本のやり方に慣れていきました。
会社については、面接で自分が選ぶというより、会社側が選んでくれて働き始めましたが、今振り返ると「ここで良かった」と思っています。

今どんな仕事をしていますか?

現在は建築の現場で、型枠の作業などを担当しています。現場では監督の指示に従って動き、型枠づくりや関連作業を行っています。

仕事は難しいですか?苦労したことはありますか?

最初は難しかったですが、だんだん慣れてきました。一番大変だったのは「仕事のやり方の違い」と「環境」です。フィリピンでも建設の仕事をしたことはありましたが、やり方はフィリピンとは異なりましたので、慣れるまで大変でした。また、フィリピンと比べて、日本は湿気があり、夏の暑さが想像以上にきつかったです。
また、図面を読む時に漢字が難しく、分からない時は「簡単な言葉で説明してほしい」とお願いして教えてもらっています。

日本人スタッフの対応はどうですか?

みんな優しいです。ちゃんと教えてくれますし、分からないことがあれば助けてくれます。仕事をしながら、少しずつできることが増えてきました。

会社にお願いしたいことはありますか?

郵便物など、難しい日本語が書いてある時に、読めないことがあります。その時に「すみません、分かりません。教えてください」とお願いすると助けてもらえるので、これからも困った時は相談したいです。

この会社はあなたにとってどんな会社ですか?

会社の人が好きです。みんな優しく丁寧に教えてくれるし、仕事のルールも分かってきました。もし別の会社に行ったら、また最初から覚えるのが大変だと思うので、ここで働き続けたい気持ちが強いです。

今後の目標や夢は?

家族がいます。子どももいるので、一緒に暮らせるのが一番の希望です。日本にずっと住みたいというより、家族と一緒に生活できる場所で暮らしたいです。日本で働いている間は、家族のために頑張りたいです。

平野建設株式会社

代表 平野 弘和
所在 磐田市国府台63-2
事業内容 建物・土木等の工事業(総合建設業)
土地の造成、店舗等建物の建築および不動産の売買、飲食店の経営 等
従業員数 正社員38名(うち外国人材 6名/フィリピン人 技能実習・特定技能)